はじまりから知っている人 田中秀さん

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じゃあ、はじめましょうか。今日は寒いですから。お茶をどうぞ。

うちはね、明治元年からです。先祖が江戸時代に、造り酒屋と舟運の仕事をしていたんですよ。銚子から江戸のあいだにある取手は、利根川の舟運で栄えた歴史があってね。河岸の新六っていうのが先祖なんです。明治になって鉄道が出てくるときに舟運をやめて、自家製でつくっていた奈良漬を生業にしたんですね。それから奈良漬の製造の研究を重ねて今の味があります。現在、私で4代目になります。

私は毎日、きざみ奈良漬をなんにでもかけて食べるんですよ。一番おいしいのは手巻き寿司。海苔の上に紫蘇を敷いて、ご飯をのせて、パラパラっときざみ奈良漬をかけて食べると旨いんです。ちょっとタラコを入れたりするとまた格別。

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昨年は創業明治元年150年記念をむかえ記念感謝祭をやりました。蔵を1日限定の蔵バルにしたんですよ。ジャズの生演奏を聞きながら、ワインと日本酒と、奈良漬を使ったカナッペの食べ比べなんかをしてもらって。とっても盛りあがりましたよ。蔵の一部はギャラリーとかミニコンサートとか、そういうのに使ってもらえるような場所にできたらいいなと思っています。

私は若いころ青年会議所に入っていたんですけど、卒業のタイミングで取手合唱団で第九をやるからどうだと誘われたんですよ。慣れない音楽に閉口したんですけど、そのうち仲間ができてね。合唱の練習が終わってからお酒を飲みに行っているうちに、取手を考える会をつくろうじゃないかということなって。取手フォーラムという会を組織したんです。取手の街をどんなふうにしていこうかってね。

そうこうしてるうちに、取手に東京藝大の先端芸術表現科ができるっていう話になって。そのうち市民も何らかの形で一緒に参加できるようなフォームをつくろうじゃないかっていう機運が出てきたんですね。商店会にも話があって。いろんな団体の協力があって、取手アートプロジェクトが生まれたんです。

はじめは先端芸術ってどんなものか先生の説明を聞いたって、私たちはよくわからなくってね。だけど何をするのにも、まず資金となるお金を集めないとできないじゃないかってことで。いや、大変でしたよ。お店や企業に寄付をもらいにいくのにもね、こっちもよくわかってないから説明のしようがないんですよ。主旨を理解していただくというよりも、顔のつながりでいただいた方がほとんどでしたね。

取手は自転車とは深い関わりがあります。まずは競輪場があって、利根川の土手や河川敷でサイクリングもできる環境があって。それから困ったことに、放置自転車が駅前にいっぱいあったので、リサイクルしようじゃないかと。それでカラーリングした自転車を駅前に展示して。これがアートプロジェクトのスタートなんです。

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今、取手フォーラムは今13人の会員がいてね、今年の春で例会300回を数えることになったんです。記念誌も出版することになりました。今までフォーラムでは取手市にいろんな提言をしてきたんです。中心市街地のこととか、芸術のこととか、歴史のこととか。ほかにもいろいろね。

取手の歴史についてはお話したことがまだ山ほどありますが、長くなってしまうので。今日のところはこの辺で。またの機会にね。

新六本店
住所:茨城県取手市2-13-36
営業時間:午前8時30分〜午後6時
定休日:毎月曜日
HP:https://www.shinroku.co.jp/
蔵バー:4月・5月・9月・10月はイベントスペースとして利用可能。詳細は新六本店へ (問い合わせ先:0297-72-0006)

取材:羊屋白玉
構成:中嶋希実